2021
04
21
遺留分とは

みなさんは「遺留分」という言葉をご存じでしょうか。聞いたことがあるという方もいるかもしれません。遺留分は、相続が起こったときにしばしば問題になります。

遺留分というのは、一定の相続人に保障されている遺産の最低限度の取り分などと説明されます。

次のような場合を考えてみましょう。ある方がお亡くなりになり(お亡くなりになった方を「被相続人」といいます)、その方には配偶者と2人の子がいたとします。各人の法定相続分は、配偶者が2分の1、2人の子がそれぞれ4分の1ずつとなります。この時、被相続人が、配偶者にすべての財産を相続させるという内容の遺言を残していたとします。この遺言が有効であることを前提とすると、2人の子は遺産を取得できないようにも思えます。遺言で示された被相続人の意思を尊重することは大事ですが、本来であれば4分の1ずつ遺産を取得できたはずの2人の子が何も得られないのは酷な気もします。そこで、相続人に一定割合の遺産の取り分を保障しようというのが遺留分という制度です。

遺産全体に占める遺留分の割合は、誰が相続人かによって異なり、民法1042条に規定されています。直系尊属(親や祖父母)のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1が遺留分となります。これを「総体的遺留分」といいます。相続人が複数いる場合には、これにそれぞれの相続分を乗じたものが各人の遺留分になります。これを「個別的遺留分」といいます。

総体的とか個別的とかわかりづらいかもしれませんね。総体的遺留分というのは、遺産全体の中でどれだけの割合を遺留分に充てることができるかということです。総体的遺留分のうち、各人が実際に取得できるのが個別的遺留分です。

今回の例のように、相続人が配偶者と子の場合は、総体的遺留分は2分の1です。これに各人の法定相続分を乗じた額が個別的遺留分となります。2人の子らの法定相続分が4分の1なので、子らの遺留分は2分の1×4分の1=8分の1となります。

遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができます。この請求権を、遺留分侵害額請求権といいます。

今回の例では、2人の子らは、配偶者に対して、遺産の8分の1に相当する金銭の支払いを請求することができます。なお、仮に、遺産が不動産しかなかった場合でも、不動産自体を取得できるわけではありません。請求できるのは、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いです。

遺留分侵害額請求権は、あくまで権利ですので、主張するかしないかは各人の自由ですし、主張しなければ認められません。相続の開始及び遺留分が侵害されていることを知った時から1年間行使しなかったときや、相続開始の時から10年が経過したときは、時効により消滅してしまいます。

なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

相続が原因で親族同士の争いが生じてしまうのは望ましいことではありませんが、このような権利があることは知っておいてもいいのではないでしょうか。

弁護士 福田光宏