最近、ある芸能人の夫婦が離婚し、父親が子供の親権者になったということがニュースになりました。このニュースを見て、父親が親権者になったということを意外に感じた方もいるかと思います。でも、離婚にあたって、親権が争いになった場合でも、父親だから不利というわけではなく、父親が親権者となることは決して不思議なことではありません。
現在でもそうですが、日本では親権争いにおいては、母親の方が強いなどと言われることがありますが、このことは、必ずしも正しいわけではないというのが、正直な印象です。
そもそも、夫婦間での話会いで、親権者を決めることはできますので、話会いでの結果、父親が親権者になるということもあります。また、ある程度成長した子供については、子供の意見が尊重されますので、子供の意向により親権者が父親になるということもあります。そして、親権に争いが生じた場合であっても、父親が親権者になることは十分に考えられます。
父親と母親のどちらを親権者にするかについては、兄弟姉妹の有無や離婚後の面会交流に対する考え方など、色々な事項を考えることになりますが、その中でポイントになるのが、監護(子供の面倒を見ること)の実績と子供の現在の生活状況です。
監護の実績については、それまでに子供の面倒を見てきた方の親が、その後も継続して子供の面倒を見た方が子供にとって良い(子供にとって負担が小さい)と思われることから、親権を考える上でのポイントとなります。
以前の日本では、男性が就労して収入を得る一方で、女性が家事や子育てを行うという家庭が多かったように思います。そのため、女性、母親に監護の実績が認められることが多く、結果的に、親権争いにおいては母親が強いというイメージが出来上がっていったのだと思われます。しかし、現在では、共働きの家庭が多く、「イクメン」といった言葉に象徴されるように、父親も育児に関わることが増えたように思います。そのような意味で、必ずしも「母親の方が強い」とは言えない状況になってきました。
また、子供の生活状況についても、環境の変化は子供にとって負担になるため、現在の生活状況が大きな問題がなく、それを継続した方が子供にとっても良いと思われることから、監護の実績同様にポイントとなる要素になります。そのため、何らかの事情で母親が家を出て父親と一緒に生活をしている場合には、父親が親権者になる可能性が高くなります。
ここまでの話を踏まえると、必ずしも「母親だから」親権者になれるというものではなく、これまでの育児への関わり方や現在の生活状況によっては、父親が親権者となることも十分に考えられます。
ニュースになった夫婦の間で、どのような経過で父親が親権者となったのかは定かではありませんが、ライフスタイルが多様化している現在では、父親が親権者になるということは、決して珍しいことではなくなっています。
弁護士 大町英祐