被相続人が死亡してから3年後に行った相続放棄が受理された事例
Nさんは、住宅ローン700万円の支払いを求める旨の通知書が金融機関から送られてきたため、当事務所に相談に来られました。
当事務所が、当該不動産の登記簿謄本を取り寄せたところ、Nさんの弟と父親の共有名義になっており、住宅ローンを2人で組んでいたことが分かりました。父親は3年前に亡くなり、Nさんも父親の相続人となっていましたが、若い頃から家族とは疎遠になっていたため、弟と父親が住宅ローンを組んでいたことなどは知りませんでした。なお、父親の葬儀の席でも弟から父親の遺産に関する話は全くありませんでした。
民法上、相続放棄は相続の開始があったことを知ったときから3ヵ月以内に行う必要がありますが、最高裁判例では、被相続人に相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当な理由があると認められるときには、相続放棄の熟慮期間は、相続財産の全部または一部の存在を認識した時から起算するとされています。そこで、当事務所では、Nさんの父親が死亡してから既に3年が経過していたものの、Nさんが金融機関から通知書を確認したときを相続放棄の熟慮期間の起算点とすべきであるなどして、相続放棄の申述を行いました。
その結果、裁判所に受理され、Nさんは金融機関に対し700万円を支払う必要がなくなりました。